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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「居る、居る、パンクしとる。先生、車輛会社が居りますたい。早うござり。」

成程、車輛会社は、三つ四つ並べた食卓の、とある隅っこと後ろの白ペンキの壁とにもたれて、ぐにゃりと、全くのところパンクしている。

「どうした。Sさん。」

「ううむ、どもならん。」

「浪の音、ソリャ、どっこい、浪の音ウか。どんこつ、おいか。」

「ううむ、お恨み申すじゃよ。」

「はっはっはっ、P公はどげんどんしたかな。P公。」

向うっ側の食卓の一つに、白服の詰襟のボーイ連、P・Q・Rが腰かけたままの突っ伏し姿で、どれもが一同にひっそりと、声ひとつない。

三等の食堂は一段上になっているので、下の雑居室は真上からそのまま瞰望せるのである。

「おおい、起きろ。や、起きとんな。しめた。先生が来た。さあ起きた。」

と、また、

「医専、慶応、早稲田ァ、二高、日本歯科、青年団、写真班、鹿児島ァ起きろ。」

と、起きた起きた。二等よりもより雑然たる諸相の中から、湧き出る、溢れ出る、転がり出る、飛び出る、それらの如く、蠢々として、哀々として、莞爾として、突兀として、二人三人五人の青年たちがむくりむくりと起き上って来た。