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フレップ・トリップ
フレップ・トリップ
北原 白秋
「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页
「じゃあ、これで解散だ。君が代君が代。」
流石は、そこで、粛として、並んで唱えた。
ほろほろと涙が滾れ落ちそうになる。
「万歳さよなら。」
「万歳さよなら。」
「諸君。また明日だ、さよなら、さよなら。」
後はしんとした。
キリキリキリと帆綱の鐶が鳴る。大海の暗黒の、風の、浪の響が、そうそうとして、急に凄く高まった。
「先生、わし、先生の裾の方へ泊めてもらいますばい。よかろ。」
Yだけは跡に一人残った。そうして談話室までまたはいり込んで来た。
「泊る。泊れ。だが、どうかな、君は九州っぽうだからな。」
「莫迦いいなさい。」
「俺はまだ美少年だし。」
「ふっ。なんちゅうこつじゃい。」
「いうにいわれぬ、その。」
「へっ。莫迦いいなさい。わしあ、そげん卑俗きこつ知らん。」
そんなら泊れと、私はソファの一つに寝て毛布を引っかぶる。Yは鍵の手なりに、私の足へその毛むくじゃらの両足を向けると、すぐに、そのまま、ぐうぐうと深い鼾をかき出した。
私もまたそれなりぐっすりと眠入ったらしい。
ふっと、眼を醒ますと、まだ夜は暗かった。足元を見ると、いつの間にかYの姿は掻き消えていた。
ああ、浪の音だ。