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フレップ・トリップ

フレップ・トリップ

北原 白秋

「女性」プラトン社、1925(大正14)年12月号~1927(昭和2)年3月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 145,698 字 · 293 页

青空文庫

「おやおや。」と私は思った。だが、いつのまにかぐっすりと眠入ってしまったものらしい。夜が明けると、早くから飛び起きて、すぐにメリヤスの襯衣に浴衣で、ドアを押して見たが、颯と来る雨霧に慌てて首をすっ込ますと、早速にレインコートを引っかぶってしまった。

「なるほど、樺太は寒いな。」と。

オートミルとフライエッグスと一、二杯の珈琲。どうにも洋式の朝飯は日本人にはしっくりゆかないものらしい。そこで、その朝は船室に籠りきりで、番茶に梅干で温まると、ないしょで味噌汁に飯をあつらえた。酒の翌朝はどうしても味噌汁に限るのだ。白い飯からはほかほかと湯気が立つ。

「どうにもこれがいい。」

「うむ。やっぱりな。」

私と庄亮とは、自分たちの談話室のソファに凭りかかって、それこそ水入らずで、また沢庵をかりかり噛んだ。

「咽喉はどうだね。」

「まだどうもいけない。妙にそのお、ここが痛んでね。」と反対にぼんの凹を片手で叩いて見せた。

「湿布でもするといいんだがな。」

「いや、僕には按摩がいちばん利くんだがね。」

「あのアスピリンはどうだ。」

「やあ、あれも君のをもう半分もいただいたんだがね。熱は下ったようだが、腹の工合がどうもよくない。