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いちしょうにんとして
一商人として
相馬 愛蔵
――所信と体験――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页
じつに行商係の苦労も容易でなかった。この行商には救世軍兵士の浅野以前に狩野という店員がこれに当って、最初の苦労をしたのであるが、一日ようやく五十銭程度の売上げで、これでは結局中止のほかあるまいと悲観された。しかしなお断念せずに浅野をこれに向けて見たのであった。
浅野は宮城県涌谷町の呉服屋の二男であったが、親の反対を押し切って、救世軍に身を投じた青年で、その純情と努力と熱と、彼は入店の初めから、興味ある※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)話を中村屋に残している。彼が狩野に代って行商に出ると、悲観されていたこの方面の形勢が一変して、一年の後にはもう彼一人では得意先をまわり切れぬという盛況となった。すなわち狩野では出来ないことが浅野では出来たのである。これを見ても適材を適所におくということがいかに大切であるか、人間に向き不向きのあるのも免れ難いこととして、人を用いる場合にはよくよく注意せねばならぬことである。再び「黙移」を引用。
――その頃大久保の新開地は水野葉舟、吉江孤雁、国木田独歩――間もなく茅ヶ崎南湖院に入院――、戸川秋骨先生、それに島崎藤村先生、島崎先生は三人のお子を失われてから新片町に移転されましたが、とにかくそういう方々のよりあいで一時は文士村と称されたものであり