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いちしょうにんとして

一商人として

相馬 愛蔵

――所信と体験――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 114,895 字 · 222 页

青空文庫

まして、また淀橋の櫟林の聖者としてお名のひびいた内村鑑三先生、その隣りのレバノン教会牧師福田錠二氏などが、その行商の最初の得意となって御後援下されて、この文士村の知名の方々へも御用聞きに伺いまして、それぞれお引立てに預かるようになりました。初めは一週に一度ずつまわることにしておりました。この救世軍の人がじつによく出来た人で、頭のてっぺんから足の先まで忠実に充ち溢れている、というような、また時間を最も正確に守り、お約束の時間には必ず配達してお間に合わせるので、本郷中村屋のパンの評判が上がり、したがってお得意も日に日に増え、一週に二度となり三度になり、おやつ頃にはよそからお買いにならずに待っていて下さるようになりました。

それがだんだんと拡がり、千駄ヶ谷方面、代々木、柏木と、もうとうていまわり切れないほど広範囲にお得意を持つようになって、すると今度はそのお得意様の方から『どうだ一つこちらへ支店を出しては』というお心入れで、私は、それをききました時は有難さに泣き、ああもったいないと思いました。その番頭はお得意のお引立てにいっそう力を得まして、支店候補地をあらかじめ見て来たといって『千駄ヶ谷駅付近が最も有望です』