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ちょうさきかん

中井正一評論集

中井 正一

中井正一『中井正一評論集』。同一底本的分册已合并为一书。收入:調査機関、図書館に生きる道、図書館の未来像、二十世紀の頂における図書館の意味、脱出と回帰、探偵小説の芸術性、芸術の人間学的考察、美学入門、絵画の不安、スポーツの美的要素。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,229 字 · 256 页

青空文庫

その自由の空気を自分のものとした時、すでに、人間は、自我の内面に、正しい理性の命ずるものを守るための、鋭い視線を、切りさいなむ剣として、ひそかにのみ込んでいるのである。ちょうど鬼が、一寸法師と一緒に針をのみ込んだように、その針が、すなわち、自分自身の批判精神が、チクリチクリと自分を刺しはじめるのである。自分を発見することは、自由を求めるのであるが、それはまた、自分をみつめ、その批判の前にさらされることともなって、寂しさが生まれてくるのである。

太陽の光をふんだんに費ったという、十八、十九世紀の絵画も、ゴッホ、ゴーガンをもって区切りとし、燃えきってしまって、やがて、一九〇〇年代、ムンクより始まって、キリコにいたる線は、寂しい空虚が、芸術を支配しはじめるのである。キリコの絵の、あの道のひろがりにみなぎっている寂しさがそれである。こころの中にひろがっている「空虚」が画面を支配し、近代的都会、機械時代、集団主義的意識に対して、個人と個性を守らんとする意識が、はるかに時代にさきんじて、空虚と畏れをもって脅えているのである。

十八世紀のなかばから、経済が、大工業機構に移るにいたって、いわゆる、機械時代への恐怖が、きざしはじめるのである。