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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
大丈夫でござりまする、御安心なさってお帰り、と突っぱねる。その安心がそう手易くはできぬわい、とうるさく云う。大丈夫でござりまする、と同じことをいう。末には七蔵焦れこんで、なんでもかでも来いというたら来い、我の言葉とおもうたら違うぞ円道様為右衛門様の御命令じゃ、と語気あらくなれば十兵衛も少し勃然として、我は円道様為右衛門様から五重塔建ていとは命令かりませぬ、お上人様は定めし風が吹いたからとて十兵衛よべとはおっしゃりますまい、そのような情ないことを云うては下さりますまい、もしもお上人様までが塔危いぞ十兵衛呼べと云わるるようにならば、十兵衛一期の大事、死ぬか生きるかの瀬門に乗っかかる時、天命を覚悟して駈けつけましょうなれど、お上人様が一言半句十兵衛の細工をお疑いなさらぬ以上は何心配のこともなし、余の人たちが何を云わりょうと、紙を材にして仕事もせず魔術も手抜きもしていぬ十兵衛、天気のよい日と同じことに雨の降る日も風の夜も楽々としておりまする、暴風雨が怖いものでもなければ地震が怖うもござりませぬと円道様にいうて下され、と愛想なく云い切るにぞ、七蔵仕方なく風雨の中を駈け抜けて感応寺に帰りつき円道為右衛門にこのよし云えば、さてもその場に臨んでの知恵のない