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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
様子では、何か深う思い詰めて来たことであろう、さあ遠慮を捨てて急かずに、老衲をば朋友同様におもうて話すがよい、とあくまで慈しき注意。十兵衛脆くも梟と常々悪口受くる銅鈴眼にはや涙を浮めて、はい、はい、はいありがとうござりまする、思い詰めて参上りました、その五重の塔を、こういう野郎でござります、御覧の通り、のっそり十兵衛と口惜しい諢名をつけられて居る奴でござりまする、しかしお上人様、真実でござりまする、工事は下手ではござりませぬ、知っております私しは馬鹿でござります、馬鹿にされております、意気地のない奴でござります、虚誕はなかなか申しませぬ、お上人様、大工はできます、大隅流は童児の時から、後藤立川二ツの流義も合点致しておりまする、させて、五重塔の仕事を私にさせていただきたい、それで参上りました、川越の源太様が積りをしたとは五六日前聞きました、それから私は寝ませぬわ、お上人様、五重塔は百年に一度一生に一度建つものではござりませぬ、恩を受けております源太様の仕事を奪りたくはおもいませぬが、ああ賢い人は羨ましい、一生一度百年一度の好い仕事を源太様はさるる、死んでも立派に名を残さるる、ああ羨ましい羨ましい、大工となって生きている