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ごじゅうのとう
五重塔
幸田 露伴
「国会新聞」1891(明治24)年11月~1892(明治25)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 57,316 字 · 111 页
その箔模様の美しきも眼に止めずして、茫々と暗路に物を探るごとく念想を空に漂わすことやや久しきところへ、例の怜悧げな小僧いで来たりて、方丈さまの召しますほどにこちらへおいでなされまし、と先に立って案内すれば、すわや願望のかなうともかなわざるとも定まる時ぞと魯鈍の男も胸を騒がせ、導かるるまま随いて一室の中へずっと入る、途端にこなたをぎろりっと見る眼鋭く怒りを含んで斜めに睨むは思いがけなき源太にて、座に上人の影もなし。事の意外に十兵衛も足踏みとめて突っ立ったるまま一言もなく白眼合いしが、是非なく畳二ひらばかりを隔てしところにようやく坐り、力なげ首悄然と己れが膝に気勢のなきたそうなる眼を注ぎ居るに引き替え、源太郎は小狗を瞰下す猛鷲の風に臨んで千尺の巌の上に立つ風情、腹に十分の強みを抱きて、背をも屈げねば肩をも歪めず、すっきり端然と構えたる風姿といい面貌といい水際立ったる男振り、万人が万人とも好かずには居られまじき天晴れ小気味のよき好漢なり。
されども世俗の見解には堕ちぬ心の明鏡に照らしてかれこれともに愛し、表面の美醜に露泥まれざる上人のかえっていずれをとも昨日までは択びかねられしが、思いつかるることのありてか今日はわざわざ二人を招び出されて一室に待たせおかれしが、今しも静々居間を出でられ、