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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
人間豹は何もお母さんをどうこうしようというわけではないんだから」
熊井もしきりに勧めるので、結局思いきって、それを実行することに話がきまった。
「僕が送って行くといいんだけれど、それでは相手に悟られるおそれがある。神谷さんも、連れ立って行かない方がいいでしょう。心配だったら、それとなく監視する方法はいくらもあるんだから。僕が手紙を書きますよ。田舎の知合いの娘さんだということにして。蘭子さんは変装をして、その手紙を持っていらっしゃればいいんです。先方が雇い入れることは間違いありません。僕の母の方からもその事をいわせておきますから」
熊井が具体的の方法を授けた。
そこで三人は一度家に帰って、蘭子のお母さんに、コッソリと相談の次第を耳打ちした。お母さんは最初は気が進まぬ様子であったが、こうでもしなければ怪獣の襲撃を逃れるすべはないと説かれて、不承不承に承諾をあたえた。信頼しきっている神谷青年の勧めをしりぞけかねたのだ。
たちまち相談が一決すると、熊井は長い紹介状をしたためて蘭子に渡し、蘭子は着のみ着のままで、神谷にともなわれて家を出た。
途中たびたび自動車を変えて、蘭子の親友のSというレビュー・ガールのアパートに立ち寄り、そのお友だちを古着屋へ走らせたりして、すっかり変装を終った。