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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「いいから、お前おぬぎ。そして先へお風呂にはいりなさい」
と命令した。
ああ、このお嬢さんは、不具のからだを恥かしがっているんだな。だが、それなれば、何も小間使いなどと一緒に入浴しなくてもよさそうなものじゃないか。
蘭子は言われるままに、とうとう丸はだかになってしまった。そして、大急ぎで湯殿へはいろうとすると、またしてもお嬢さんの声だ。
「まあ、美しいからだをしているのね。お前田舎から出てきたばかりなの? うそでしょう。ほんとうは大都劇場のレビューに出ていたんじゃない?」
蘭子は雷にでも撃たれたように、ハッと立ちすくんでしまった。世間知らずのお嬢さんと見くびっていたら、この人はまあ、なんて鋭い眼を持っているのだろう。
「江川蘭子。ね、そうでしょう。あたし、ちゃあんと知っているのよ」
不思議なことに、お嬢さんの声の調子がひどく変っていた。笛のように甲高い声が、いつの間にか、しわがれた太い声になっていた。
「すみません……これには少し事情があるのです。決して悪意があってしたことではありません」
蘭子ははだかのまま、脱衣室のコルク張りの床に坐って、素直にお詫びをした。