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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
つまりこの僕とソックリの男だ」
明智が前に立ちはだかって聞くと、いざり乞食はヒョイと顔を上げて、不意の質問者を眺めた。なんてひどい片輪者であろう。両足がまったくだめで、手に草鞋のようなものをはいている上に、顔じゅうが腐れただれて、ほとんど眼鼻もわからないむごたらしさだ。その顔が破れたお釜帽子の下から、ヒョイと覗いたときには、明智は思わずわきを向いて、話しかけたのを後悔したほどであった。
「ああ、旦那とそっくりの人、通った、通った、あっち、あっちへ行った」
乞食は呂律のまわらぬ口でそう言いながら、草鞋ばきの手で観音堂の方を指し示した。
「ほんとうかい。間違いないだろうね」
「ウン、ほんとうだ。旦那とそっくりだった」
乞食の鈍い眼にも、明智の際立った変装姿がわからぬはずはない。それとそっくりの男だったというからには、おそらく間違いはないであろう。こんな恐ろしい形相の人間が、あいつのほかにあるはずはないのだから。
一同は明智を先頭に、観音堂の方へ歩いて行った。明智はその辺にウロウロしているルンペンどもを捉えて、片っぱしから質問した。恒川氏は、お堂の前の交番に立ち寄って、そこの警官にも聞きただした。