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にんげんひょう
人間豹
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页
「ちょっと待ってくれ。なんだかわかりそうだぞ」
明智の眼が昂奮のためにギラギラと光って見えた。
「何かカラクリがある。手品の種がある……そうだ。きっとそうだ。おい、恒川君、僕は大変な失策をやった。だが、まだ間に合うかもしれない。あいつだ。あのいざり乞食をふん縛るんだ」
言い捨てて脱兎のごとく駈け出した。あとの三人もそのあとに従った。
一と飛びに二天門まで駈けつけたが、案の定、そこにはもう乞食の影もなかった。やっぱりそうだ。落とし物を教えるような顔をして、実はあいつ自身が、封筒を明智の通ったあとへ投げ捨てておいたのだ。そんなまねをするやつがほかにあるだろうか。あいつこそ人間豹の変装姿であったに違いない。かたわ乞食に化けて、浅草の雑沓に隠れていようとは、なんというズバ抜けた思いつきであろう。
人々は門の付近を歩きまわって、乞食の姿を尋ねたが、どこにもそれらしい影は見当たらなかった。
明智は大道易者のテントにまで首を突っ込んで尋ねていた。
「君は毎晩ここに出ているのだろうね。二天門の下のいざり乞食を知っているかね、手に草鞋をはいたやつだよ。あいつはいつもあすこにいるのかね」