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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

「ウン、それもあらあ、どんな縄抜けの名人だって、その縄だけは、ちょいと抜けられめえよ」

「それから、そのピストルかね」

「ウン、そうよ、そうよ。この小っちゃい仲間は、まことに気持のいいやつでね。貴様たち二人くらいの命を取るのはなんの造作もありやしないのさ」

「ブルブルブル、おお、怖い怖い。それじゃあ、まあおとなしくころがっているとしようかね」

明智はおかしそうに笑い出して、ゴロリと横になった。

「なんだか薄気味のわるいやつだなあ……だが、そうおとなしくしていりゃあ、こっちも別に文句はねえ。じゃあまた窮屈だろうが、こいつをはめさせてもらおうかね」

男は固く丸めた手拭いを取って、再び猿ぐつわをはめる用意をした。

「おい、君、そいつをはめる前に、一つ頼みがあるんだがねえ」

明智がやっぱりニコニコして言い出した。

「なんだ」

「君は煙草を持っていないかい。腹がくちくなると、今度は一服吸いたくってねえ。面倒ついでに、一つ煙草もくわえさせてくれないか」

「ウン、煙草か。感心だよ。さすがに度胸が据わっているねえ。お安いご用だ。だが、おあいにくと、切らしたよ。おれもさいぜんから一服やりたくってしようがねえんだが、君たちをほうっておいて買いに出るわけにもいかずねえ。