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にんげんひょう

人間豹

江戸川 乱歩

「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1~2月、5月~1935(昭和10)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,989 字 · 311 页

青空文庫

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「あっ、しまった。神谷君、運の尽きだ。見たまえ、もう一時を十五分も廻っている。ひょっとしたら間に合わないかもしれん」

明智がまっ青な顔をして、眼を血走らせて、うめくように言った。

だが、神谷青年にはその意味がよくわからなかった。

「さっきから聞こう聞こうと思っていたのですが、いったい僕たちはどこへ行くんですか。間に合わないというのは何に間に合わないのですか」

「僕の家内の命の瀬戸ぎわです。殺されかけているんです。探偵のくせに女房一人救えないなんて……畜生、どんなことがあっても、救ってみせるぞ」

彼は燃えるような敵意をこめて言い放ったが、次の瞬間には、又しても不安と焦慮にくずおれていた。

「ああ、しかし、だめかもしれない……この長い長い貨物列車が、僕の悪運を象徴しているのかもしれない」

美しき半人半獣

サーカスの舞台では、ピシーン、ピシーンと鞭が鳴る。檻の横手にピカピカ光る金色の一物。それは名にしおう猛獣団長大山ヘンリー氏の闘牛士そっくりの扮装であった。彼の右手がサッと空を切るごとに、血に餓えた猛獣たちをいやが上にも狂乱せしめる鞭の音が、檻の上空に鳴りはためくのだ。