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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

母は、おとよさんになど、衝突の原因を、実際あったとは違った風に説明しているらしかった。伸子は、

「佃は無関係だのに、巻添えをくったのよ」

と説明した。

「私の書いたものがお気に障ったの」

なか一日置いて、つや子が書生と遊びに来た。保が花壇の花を持って来た。弟妹達が、これまでよりずっと頻繁に来るようになった。伸子はその陰に母の心持を感じた。彼らがかえると、彼女はきっと、こんなようにきくだろう。

「どうだい、姉さんいらしたかい、面白かったかい?」

保は保らしく、つや子はつや子で女の子らしく、それに答えるだろう。すると、母はまた、重ねて訊くに違いない。

「姉さん何をしていたかい?」

最後に偶然そうに、しかし特別な関心で、

「佃さんはいたかい?」

或は、

「どうしていたかい」

などと訊くのではあるまいか。相手が無心だから、彼女は詳細に触れられず、いくら訊ねてもきき足りなく思うのではあるまいか。弟や妹が帰ったあと、伸子はよくそんな情景を空想した。

佃はつや子や保の来るのがうるさいらしかった。つや子が彼の頸にからまって、

「ね、一緒に遊びましょうよ、お姉ちゃまと二人じゃつまんないから、よう」