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のぶこ
伸子
宮本 百合子
「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页
それらはじっと午後二時の太陽に照りつけられている。石ころの転がる音もしないところへ、巨大な鞴を吹くような、噴火口の唸りだけが聴える。音は強くも弱くもならず、のそのそしていると、ハタとその唸りが止んで、山じゅう爆発でもしそうな恐怖を伸子に与えた。
「行きましょうじゃあないの」
「うむ」
道の嶮しさ、自然から受ける威圧。二人は黙って、一気に坂を踰えた。
「やっと来た! よく我慢しましたね。私は、きっと中途で引きかえすことになるんだろうと覚悟していた」
「登りかければどうにかして登るわ」
噴火口は、頂上の横穴のようなところにあった。灼熱した硫黄が、燃え立つラバとなってそこから流れ出している。その焔色の周囲に、冷却した部分が、世にも鮮やかな黄色の鐘乳石のように凝固している。限りない盛夏の碧空、その硫黄の色、強烈な配色であった。硫黄採りの男が数十人、ある不安に黙りこませられたように、真面目に働いているのが、荒涼として長い山の斜面に見えた。
往きの半分の時間もかからず、彼らは峠の小休茶屋まで還った。
「あら、店をしまったのね、休みたかったのに」
「天気がわるくなったからでしょう、まあ、ずっと帰ろう」