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のぶこ

伸子

宮本 百合子

「改造」1924(大正13)年9月号~1926(大正15)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 232,543 字 · 466 页

青空文庫

彼は、津山の診断だけでも勢いづいた。

「――有難う。――色のついたものなんか出たんで、すっかりびっくりしてしまいました」

「そうですね、素人の方は。しかし却ってその方が安心ですよ、早く気をつけるから……」

伸子は、お手洗いを、と云おうとして、思いついた。

「恐れ入りますけれど、おついでに私も一度御覧いただいて置きましょうかしら」

伸子はどこにも異常なかった。津山は、明日K病院の呼吸器専門の人と、また来ると云って帰った。

「御覧なさい! 私の云う通りでしょう」

伸子は医者を送り出して来て、云った。

「――いや、しかしまだわかりません。専門家が見ないうちは」

「いやね」

と伸子は笑った。

「ヒステリーのお嬢さん! 重くないとお気に入らないの?」

しかし、その夜寝ようとして、夜具を引上げた拍子に、佃はまた少量の血液を出した。彼は精神感動の方が強くて、真蒼になり、氷のような四肢を震わせた。

六

日曜日に、伸子は動坂へ行った。

門に自動車が止っていた。伸子は玄関で訊いた。

「お客様?」

「須田のお嬢様がたがいらっしゃっていらっしゃいます」

「父様は?」

「お客様でございます」

「ああ別なの」