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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

巨人の指の関節は、一種の蝶交いになっていて、機械仕掛けによって屈伸自在なのだ。何しろ電柱ほどもある指、それが機械で動いているのだから、小さな人間の力ではどうすることもできない。だが、妙なことに、三好曹長は、さして驚いた様子もなく、鉄の指に掴まれたまま微笑を浮かべていた。

「君は僕を虜にしたというわけだね」

「まあそうですね、苦しいですか。一つあなたの力で、それを抜け出して見ては如何です」

韮崎もニヤニヤ笑いながら穏かに云った。

「抜け出せないこともあるまい。一つやって見ようかね」

「ホホウ、やってごらんになる。そいつは面白いですね。拝見しましょう」

一方は鉄の指に全身を挟まれ身動きもできぬ姿勢のまま、一方はその前に立ちはだかり腕組みをしてこれを嘲笑しながら、二人の視線は数瞬憎悪の火花を散らして空中に斬り結んだ。

するとその時、非常に意外なことが起った。ガチャンと烈しい音と共に、鉄の指が開いたのである。三好曹長は忽ち自由の身となってその場を遠ざかり、油断なく身構えをした。

「先ずこんな鹽梅さ」

韮崎はそれを見ると、呆気にとられて暫くポカンと口を開いたまま棒立ちになっていたが、やがて狂気のように鉄の指に向って突進して行った。