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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

何か故障があったのだ。機械が狂ったのだ。でなければこんな途方もないことが起る筈がない。彼は鉄の手の平のあちらこちらを撫で廻して、その故障の箇所を確めようとした。

その時、再び奇蹟が行われた。巨人の指は忽ち内部に彎曲し始め、見る見る内に彼の主人である韮崎を握り締めてしまったのである。流石の錬金術師も、かくの如き現象が起ろうとは夢想だもしていなかったので、身を翻えす隙がなかった。鉄の指は彼の全身を完全に握りしめ、その握力は刻一刻強まって来るばかりである。

「助けてくれ……」

機械の製作者は機械の力を熟知していた。抛っておけば命のないことを知りすぎる程知っていた。彼は狂人の如く叫び、狂人の如くもがき、錬金術師の体面を忘れて醜態の限りを尽した。

「危いところでしたね」

垂幕をかかげて一人の若い男が入って来た。国民服に巻脚絆、三好曹長と同じ服装である。

「有難う、うまくやってくれたね」

三好曹長はその若者を振返って微笑した。

「アッ、貴様がスイッチをいじくったんだな」

韮崎がもがきながら呪いの声を振り絞った。鉄の指は旋盤の側にあった配電盤の一つのスイッチによって操作される仕掛けであった。