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いだいなるゆめ

偉大なる夢

江戸川 乱歩

「日の出」新潮社、1943(昭和18)年11月~1944(昭和19)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 117,988 字 · 234 页

青空文庫

五人の憲兵がそれにつづく。新一は最後まで隠し戸の上に残っていた。

少佐が拳銃を構えて階段の中ほどまで降りた時、六人の怪人物は一斉に立ち上り、十二の眼が少佐を凝視した。そして、六人の右手が揃って腰のポケットに行き、六挺のピストルが取り出され、六つの筒口が少佐の胸を狙った。

しかし少佐は少しも躊躇せず、しっかりした足どりで静かに階段を降りて行った。この豪胆極まる行動が数秒間六人の者共を畏縮せしめたかに見えたが、結局、六挺のピストルの引金は引かれたのである。だが不思議なことにカチ、カチ、カチという音がしたばかりで、弾丸は一つも発射されなかった。望月少佐はそのとき階段を降り尽して、六人の悪漢共の目の前に悠然と立っていた。擦り傷一つ受けないで、微笑さえしながら。

六人の者共の顔にサッと狼狽の色が浮かんだが、彼等は更らに二度三度、無駄に引金を引き、空しくカチカチという音をさせた後、腹立たしげにピストルを床に投げ捨てた。同時に悪漢共の中から突拍子もない笑い声が起った。六人の内最も背の高い毒々しい顔をした男が、何がおかしいのかゲラゲラ笑い出したのである。そしてヨロヨロと一方の壁に歩み寄り、どこの国の言葉とも分らぬ叫び声を立てながら、壁の上部に設けられた電線のスイッチに手をかけた。