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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

「何うした?」

と皆寄り群った。

「再ってことだ」

と赤羽君はニコ/\していた。

「何」

「再試験をして貰う」

「いつ?」

「来学期だ」

「それじゃ、一緒に出られないのか?」

「うん。仕方がない」

「これでも、特別の計らいらしいです」

と吉田君も苦情がなかった。

しかし私達有志は再び運動を始めた。信者組は手を引いて、私と高木君と野崎君だった。

「何うせ一月後に卒業させるものなら今させても同じことじゃありませんか? 一緒に入って一緒に勉強して来た僕達は情誼に於て二人を残すに忍びません」

と言う勝手な言分だった。猪股先生は受けつけない。高木君は行きがかり上、

「赤羽君と吉田君が一緒でないなら、僕達は卒業式に出ません」

とやり出した。

「それは君達の勝手です。御相談には及びません」

と先生は飽くまで強硬に突っ刎ねた。それが卒業式の前の晩だった。私達はその通り実行した。しかし式が済んでから気がついた。三人は卒業証書が貰えない。

「何うしよう?」

「権利はあるんだ」

「これから猪股先生のところへ行こう」

ということになった。早速その晩、玄関へ出頭して、高木君が先ず、

「先生、この間中は真に済みませんでした」