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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

尊、駿河の国に到りし時……」

とこれは高等一年、今の尋常五年だった。不思議に第一課丈け頭に残っている。

私達はこの駿河の国だった。こゝを習った時、私は疑問が起ったから、

「先生」

と呼んで手を挙げた。

「河原さん、何ですか?」

と先生は誰も私の質問を喜ぶ風があった。

「日本武尊に手向いをして火を放ったのは駿河の国の人達ですか?」

「然うです。土民です」

「先生、それじゃ僕達困ります」

「何故ですか?」

「駿河の国の土民なら僕達の先祖です」

と私はこれが畏れ多かった。

「ワッハッハヽヽヽ」

と同級生は笑い出した。

「いや、その土民は皆悪ものばかりですから、私達と関係ありません。この本にも書いてある通り、一人残らず焼け死んだり討ち滅されたりしてしまいました」

「あゝ、然うでした」

と私は安心した。

「皆さん」

と先生は一同の注意を惹いて、

「読本を読む場合に字ばかり読んで、書いてあることを考えないようでは何にもなりません。皆さんは今河原さんの質問を笑いましたが、それは大きな心得違いです。字を読むと一緒に意味を読めば、種々と不審の起るのが当り前です。それを考えて見たり訊いて見たりするのが高等科の読書科です。