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ぼんじんでん

凡人伝

佐々木 邦

「雄辯」大日本雄辯會講談社、1929(昭和4)年4月号~1930(昭和5)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,944 字 · 202 页

青空文庫

尤も同級生は大抵農家の子だ。学業も行儀も到底私の比でない。

「お母さん、この頃は先生が褒めてくれない」

と鼻を鳴らしても、又直ぐに、

「お母さん、今日は先生が河原さんは豪いと仰有いました」

と報告する日が来る。褒められる機会があれば決して逸さない。

「これは何ういうことでしょうか? 分る人は手を挙げて」

と先生が見廻す場合、

「先生!」

と私は真先に手を挙げて振り廻す。

「誰かこゝへ出て、この唱歌を一人で歌って御覧なさい」

「先生!」

「河原さん」

と先生は私を指してくれる。

「風車あ、風ぜのう、まあにまあに繞るなりいやあまず繞るも、やあまず繞るうもう……」

と私は顔中を口にして歌う。何うも大変な奴だと皆は思っていたに相違ない。

「誰かこゝへ出てメメンワンワラを黒板に書いて御覧なさい」

「先生!」

「白墨がなくなったから、誰か教員室へ行って持って来て下さい」

「先生!」

と褒められたくて溜まらない。浅ましい話だが、そこは子供だ。

教室以外にも大に努力した。一日一善というような考えが子供の時にあったのだから、少しは買って貰いたい。学校へ行く途に村社の八幡宮がある。二年生になってから私はその前を通る時、必ず帽子を脱いで敬礼をすることにした。