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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「君だって余り好い血色でもないぜ」

「僕は少し胃が悪いんだ」

「それじゃ君こそ運動の必要がある」

「しかし一人じゃ退屈する。何うだい? これから些っと帰りに散歩しようじゃないか?」

「宜かろう。何処へ行く」

「然うさな。虎の門で下りて日比谷公園をぶらつこう」

「異議なし」

「秋は馬さえ肥るんだからね。直ぐに帰って勉強するのは惜しいよ」

「兵隊が何とか言っている。しかし確かに散歩の好季節だ」

と僕は少しも疑わなかったが、菊太郎君には魂胆があったのだ。

虎の門から日比谷公園が一月ばかり続いたように覚えている。それから菊太郎君が又発起した。

「君、僕はこれでもこの頃は精神修養を心掛けているんだよ」

「ふうむ」

「何だい? 鼻で扱うのか?」

「いや、そんなこともないけれど、君にしては珍らしいからさ」

「乃木大将の伝を読んでいるんだ」

「ふうむ」

「又かい?」

「益※(二の字点、1-2-22)柄にない」

「乃木さんは矢っ張り偉い。神社に祀られる丈けのことがある」

「何か得るところがあったのかい?」

「僕だって向上心はあるよ。一体、君は失敬だ」

「何故?」

「僕といえば感激も何もない俗物だと思っている。