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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

同じ年の同じ月同じ日に生れて、小学中学大学とも同級の隣り同志だから深い因縁だ。僕は午後の課業が終ると直ぐに、菊太郎君と一緒に乃木坂へ廻った。

「君、僕は乃木将軍の伝を五冊から読破しているぜ」

と菊太郎君も流石に気が咎めたようだった。

「よせよ」

「何だい?」

「もう他人行儀には及ばない。君と僕は同じ日に生れて隣り同志に育ったんだ。学校だって悉皆同じだもの。君が乃木大将の伝を読む人間かどうか、チャンと分っている」

「早合点をしちゃ困る。読まない方に分っているんだろう?」

「うむ」

「失敬な」

「ハッハヽヽ」

「僕は五冊から読破している。嘘だと思うなら見せてやる。何月何日読破ということまで一々書いてあるんだ」

「兎に角、将来は時々乃木さんへお詣りすることになるかも知れないね。僕はそう切望して置く」

「僕もそんな想像を描いている。里へ遊びに来た時、一寸乃木さんへお詣りして来るなんてことにね」

「そのとき何んな人が祀ってあるんだろうと思って、乃木さんの伝を買っても晩くはない」

「君は失敬だよ、本当に」

「ハッハヽヽ」

「自分が読んだことがないものだから、人も然うだと思っているんだ」

「ハッハヽヽ」