轻松读懂日语经典作品
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かちうんまけうん
勝ち運負け運
佐々木 邦
「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页
「御演説をなさる時は屹度失禁していらっしゃいます」
と看護婦が言った。
「何ですか? 失禁ってのは」
「おシッコでございます」
「はゝあ」
「ベッドを大洪水にして、滔々と弁じていらっしゃいます」
「誰でもそんな風ですか? 熱が高いと」
「いゝえ」
「少し熱が下ると宜いんですけれど」
と僕は溜息をつくばかりだった。
「矢っ張り学者は違ったものでございますわね」
「学校のことが頭にあるんです」
「秀才でいらっしゃいましょう?」
「はあ。迚も出来が好いんです」
「普通の患者さんとは御人格が違いますから、譫言も立派なことばかり仰有います。私、斯ういうお方は初めて御看護申上げます」
「他に何か言いませんか?」
「一から十まで学問のことでございます」
「矢っ張り頭が好いんです」
「斯ういう秀才は国家のためにも癒して差上げなければなりません」
と看護婦は感激していた。
菊太郎君は脳症が治まってから順調の経過を辿った。二週間ばかりで熱が下り始めた。元来丈夫な身体だから、肥立ちかけると早かった。但し物を食いたがって困った。或日のこと、
「君、相談がある。内証だ。秘密を要する」
と持ちかけた。僕はもうソロ/\乃木坂の件だろうと思ったら、何か食物を匿して持って来てくれというのだった。