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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

直観といえば、丁度菊太郎君が悪い最中だった。チブスをやって苦労をかけるよりも、手張りをやって損をかける方が親不孝の罪が軽かろうと考えた。斯う一々理窟をつけて行動する程度だったから、無論大きなことは出来なかった。お客さまから新東三百買という註文を受けた時、三百五十にして置いた。

「丸尾さん、この五十だけ僕です」

「おやりになったんですか?」

「はあ。度胸を据えました。運試しです」

「矢っ張り買でしょうな、こゝ当分は」

「僕も然ういう直観です」

「早速ながら、証拠金を戴いて置きましょう」

「お客さまのと一緒に立て替えて置いて下さい」

「お父さんが御承知ですか?」

「いや」

「それじゃ困ります」

「そこを何うか」

「これが危いです」

と丸尾さんは首を叩いて見せた。

「何うしましょうか?」

「お父さんに一言申上げて来て下さい」

「駄目です」

「お母さんでも宜いです。私は使用人ですから、一存では計らえません」

「それじゃ一寸行って来ます」

しかし僕は単に家へ帰る風をしただけだった。丸尾さんもそれぐらいのことは分っていた。名目さえ立てば宜いのだった。直ぐに融通をつけてくれた。三四日たって、そのお客さまが仕舞った時、僕も仕舞ったら、手取り百五十円ばかり儲かった。