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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

年が少し多いだけに時々意見めいたことを言い出す。しかし分らない人ではない。父親に内証でチョク/\融通をつけてくれた。

「手張りを封じたんじゃ人間を殺すようなものです。口銭々々って、堅いことを仰有っていても、お父さんだって実は手張りからお仕上げになったんです」

と自分も好きだから話が分っている。尤も帳簿が合わなくなると僕が権太をやる。権太というのは母親に泣きついて出して貰うことだ。

「丸尾さん、僕は一つあなたの智恵を借りたいことがあるんですが、相談に乗ってくれますか」

と僕は或日改まって切り出した。一寸手隙になって、食堂へお茶を飲みに行った時だった。

「いけませんね、幾つやっていらっしゃるんですか?」

「いや、商売の方じゃないんですから御安心下さい」

「これは又情けない若主人ですな」

「何故ですか?」

「店の信用に関係しますよ。商売の方じゃないから安心しろなんてのは」

「寄進についてばかりいるから仕方ありません」

「何ですか? 一体」

「恋愛問題です」

「ヘヽエ。これはお出なすった」

「ハッハヽヽ」

「手張りをやったり、恋愛をやったり、ナカ/\お忙しいんですね」

「僕じゃないんです」