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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「ハッハヽヽ」

「矢っ張り秀才です。凡人には出来ない芸当です」

と多少為人を知っている高野さんが敬服するくらいだから、矢田家の人達へ好い印象を与えたこと言うまでもない。

「それっきりでしたか? 脳症の話は」

「はあ。雄弁滔々だったそうです」

「有難いです。秋山さんは好いところだけ吹聴してくれたんでしょう」

「医者も感心していたというんですから豪いものです。御主人も奥さんも悉皆乗気になって、早速話を進めてくれと仰有いました」

「するとこれから僕のところの親父が乗り込むんですな」

「はあ。橋渡しはもう済みました」

「御苦労さまです。何ともお礼の申上げようがありません」

と僕が喜んでいるところへ菊太郎君がやって来て、突然、僕の首っ玉に齧りついた。場だから人目がある。皆驚いた。

「喧嘩じゃありません。縁談ですよ」

と高野君は誤解を恐れた。

「ハッハヽヽ」

と周囲の人達が拍手喝采した。菊太郎君は感極まったのだった。純情は結構だが、これでは纏まらない中から評判になってしまう。

次の日曜に僕の親父が菊太郎君の写真を携えて矢田家を訪問した。無論打ち合せがしてあったけれど、僕は何となく不安を感じた。