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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

これが怖いんだ」

「先口は絶対にない」

「何故?」

「直観だ。考えて見給え。姉さんの縁談で忙しかったから、妹の方の話を始める余裕がない。僕のところでも僕の身が固まったら、昨今漸く律子の方へお鉢が廻ったんだ。親ってものは同時に二人分の縁談を考えない。問題が重大だから、本能的に然うなるんだろう」

「成程」

「経済方面からも先口はないと断定出来る。中学校の校長さんだぜ。清貧に定っている。一人片付ければ可なり利くから、矢継ぎ早にもう一人って元気は出ない」

「成程」

「それだから妹さんの方は未だ話が始まっていない」

「有難い」

「これぐらいの直観が働かなければ、株屋の若旦那は勤まらないぜ」

「直観はよしてくれ給え。危くて仕方がない」

「大舟に乗った気でい給え」

「それも前例があるんだから」

と僕は口先で冗談を言っても、肚の中では菊太郎君の論理に敬服した。

菊太郎君は数日後、小柴君が新婚旅行から帰る頃を見計らって、早速行動を開始してくれた。小柴君から加藤家へ橋渡しをして貰う段取だった。小柴君は会社員だ。しかし大した格式の会社員でもないし、学校の成績も僕達と似たり寄ったりだった。それでいて文子さんを貰っているのだから、この点も意を強くすることが出来る。