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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

小柴君も失敬だ。もう行かない」

「まあ/\、気を長く待つんだね。君は一遍人生の痲疹をやって、もう悟りを開いていると言ったじゃないか?」

「あれは軽かったから、今度のが本当だろう。重い上に藪医者ばかりついている。癒りっこないんだ」

と僕は悉皆気が腐ってしまった。秋の中頃から始まって、もう年の暮だった。手張りをやる元気もなく、得意を失策らない程度で怏々として勤めつゞけた。

押し詰まって、或晩のこと、

「日出男や、一寸お出」

と母親が僕を親父のところへつれて行って、一緒に坐った。

「何か御用ですか?」

「日出男や、お前は何うかしたのか? この頃は苦虫を噛み潰したようなむずかしい顔ばかりしているじゃないか?」

と親父はお談義らしかった。目に余っていたに相違ない。

「…………」

「何処か身体でも悪いのか?」

「いゝえ」

「何か不足があるのか?」

「さあ」

「菊太郎さんが世帯を持ったのに、お母さんも俺も知らん顔をしているから、面白くないんだろう?」

「…………」

「嫁を貰ってやるが、何うだね? 丁度好いのがある」

「僕、その問題なら自分に考えがあるんですから」

「親の言うことを聞いても、罰は当るまい。