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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

それが直ぐ上の姉に移って、二人とも長いこと苦しんだそうである。元来を言えば、僕が菊太郎君のを貰ったのだ。菊太郎君も重かったそうだが、これは自分で仕出来したのだから仕方がない。それから四つの時に痲疹をやった。これも菊太郎君のが移ったのである。菊太郎君は軽かったが、僕は余病が出て、母親が神信心をしたくらいだった。次に水痘というのをやった。これは何方も大したことがなかった。皆後から聞いた話で、自分には覚えがないけれど、その都度菊太郎君から頂戴している。菊太郎君は病気を移す名人だった。有り余って施しをする人相というのが妙なところで当っていた。

さて、朝から取りかゝって、これ丈け書き進んだとき、妻が上って来た。僕の書斎は二階だ。株屋の息子に書斎は変だと思うかも知れないが、僕だってこれで○○大学を卒業している。同級生には教授や経済記者もあるから、人の褌で相撲を取るのでもないが、分相応の学者の積りだ。

「御精が出ますね、何を書いてらっしゃいますの? お手紙?」

と妻が覗き込んだ。妻は幽香子という。名詮自性、蘭の花を聯想させるような美人だ。これを貰うについては、菊太郎君が一方ならず骨を折ってくれた。