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かちうんまけうん

勝ち運負け運

佐々木 邦

「キング」大日本雄辯會講談社、1934(昭和9)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 119,262 字 · 243 页

青空文庫

「後十日の命か? 心細いな」

「何だか君は変だね。もうグラつき出したよ」

「いや、一寸君の気を引いて見たんだ」

「それなら宜いけれども」

と僕は鉄石心の積りだった。

この辺の消息は無論豊子さんに通じていた。菊太郎君が逐一話して置いてくれた筈だけれど、僕は念を使って、律子さんに言伝を頼んだ。直接申入れるのが何となく怖かったのである。先頃で懲りている。愛人を恐れるようでは無論形勢がよくない。

「律子さん、僕、この通り兄さんと勉強の相談をしているんですから、今までのこと、堪忍して下さいって、何うぞ姉さんに」

と自分ながら見識の低い話だと思った。

「駄目よ」

「何故ですか?」

「オホヽヽヽ」

「律子! 律子!」

と菊太郎君が制した。

この言伝に対しては、豊子さんから直接に返事があった。矢張り菊太郎君の部屋だった。考えて見ると、僕はもう短兵急になって、毎日のように遊びに行っていた。この辺は妻に読ませたくないのだけど、小説は現実暴露だから仕方がない。

「日出男さん」

「はあ」

「あなた、律子に仰有ったこと、何故お手紙にお書きになりませんの?」

「さあ」

と僕は考え込んで、

「手紙に書いては悪いと思ったんです。