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ぜんのけんきゅう

善の研究

西田 幾多郎

「善の研究」弘道館、1911(明治44)年2月6日発行

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,777 字 · 243 页

青空文庫

然るに意識の分化発展するに従い主客相対立し、物我相背き、人生ここにおいて要求あり、苦悩あり、人は神より離れ、楽園は長えにアダムの子孫より鎖されるようになるのである。しかし意識はいかに分化発展するにしても到底主客合一の統一より離れることはできぬ、我々は知識において意志において始終この統一を求めているのである。意識の分化発展は統一の他面であってやはり意識成立の要件である。意識の分化発展するのはかえって一層大なる統一を求めるのである。統一は実に意識のアルファでありまたオメガであるといわねばならぬ。宗教的要求はかくの如き意味における意識統一の要求であって、兼ねて宇宙と合一の要求である。

かくして宗教的要求は人心の最深最大なる要求である。我々は種々の肉体的要求やまた精神的要求をもっている。しかしそは皆自己の一部の要求にすぎない、独り宗教は自己其者の解決である。我々は知識においてまた意志において意識の統一を求め主客の合一を求める、しかしこはなお半面の統一にすぎない、宗教はこれらの統一の背後における最深の統一を求めるのである、知意未分以前の統一を求めるのである。