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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

ことに面白いことは、その放送の始まっている間、欧州におけるファッショ対コンミュニズムの戦争も一時休戦状態に入ったことである。そして大隅学士の講演が終了すると同時に、世界各地における戦争は、無期休戦に入ることを広く告げられた。

「われわれ地球に棲息する人類は、骨肉相食む闘争を即時中止し、全人類一致団結して、やがて侵入して来ようとするウラゴーゴルに対する戦闘準備を考究しなければならぬ。さもなければ、この次こそ、わが地球は八十億年の名誉を傷けられ、かのウラゴーゴルの奴隷とならねばならないであろう」

――と欧州の盟主ヒットリーニ氏は、国際放送をもって、世界の全人類に呼びかけたほどである。従って、大隅学士は人類の大恩人として、毎日のようにいくら断っても断り切れぬ招待会に追いかけられて、とうとう身体を壊しそうになった。とうとう彼は一夜、ひそかに飛行機に乗って帝都をぬけだし、ただ一人、想い出の矢追村に帰った。

月明の矢追村は、大隅学士を迎えて、まるで何事もなかったような平和な顔をしていた。

「ああ、武夫君はその後どうしたろうネ」

彼はそこで、ゆくりなくも巨人病に罹った哀れな武夫少年の身の上を思った。