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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

綱をしっかり持っているんだぜ」

そう云い捨てるなり、飛行服の男は無頓着に井戸の中へ下りていった。何者だろうと、学士が面喰っているうちに、飛行服の男は全身ズブ濡れになって、井戸側の上に匍い上って来た。その歯と歯の間には、草履袋をすこし大きくしたような真黒な袋を銜えていた。彼はヒラリと地上に飛び下りると二本の指でその黒い袋をぶら下げたまま、大隅学士の前に近づいた。

「大隅さんというのは貴方でしょう。さあここに貴方の注文した品物があります。あまり暑いのでちょっと行水したようだから、早いところ陽に乾したらいいでしょう。おわり」

そういって彼はおどけた手つきで、上官にするように挙手の敬礼をした。先刻から土間の入口に尻餅をついていた宿のお内儀は、この光景にやっと安心したものか、着物の泥を払って立ち上った。

大隅学士は狐に鼻をつままれたような感じで、渡されたびしょ濡れの袋を開いた。中からは丸く膨らんだ茶色の大きな封筒が現れた。もちろんすっかり水に濡れていたが、裏には「東京一ツ橋、中央気象台、中屋技師発」とあり、表をひっくりかえすと、「大隅青二殿」と大書し、その傍に「佐々砲弾君ニ托ス」