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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

古花甚平はとうとう後頭部をしたたか壁にぶっつけた途端に、悪夢から覚めたかのように、パッチリ眼を明いてしまった。

「……あああーッ。これァどうしたちゅう訳じゃろう?……」

甚平はキョロキョロあたりを見廻した。

「南無三、覚めな覚めな。カンツーム、ヴィスヴィス。あーら、あーらア……」

だがもう呪文の効き目はなかった。甚平は完全に催眠術から覚めてしまった。こうなっては万事休すだった。遉の佐々砲弾も諦めて退散するより外なかった。

大隅学士は、下宿で、佐々の帰りを待ち侘びていた。

「いやあ、よくやって呉れたネ。君のお蔭で辻川博士の行状が大分明かになってきたよ」

「どうも惜しいところで催眠術が利かなくなっちゃったよ。そのうちに何とかして、もう一度やってみせるよ」

そこへ下宿のお内儀さんが、井戸の中に漬けて冷やしてあったビールを搬んできた。それは大隅学士の心尽しだった。

「やあ、俺の大好物が出てきたな。これはすまん」と佐々はゴクリと喉を鳴らした。

「ビールの満を引いて、大いに作戦を練るとするか」

二人は泡立つ洋盃を上げてカチンと打ちあわせ、不思議な縁で結ばれた共同戦線のため万歳を叫んだ。