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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
「ラヂオ科学」1936(昭和11)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页
辻川博士邸内にも、暁の雲間を破った太陽がすがすがしい光をさし込んできた。大隅学士はあたりを警戒しながら、庭園の繁みを匍いだした。彼は昨夜、佐々砲弾の「空の虱」の掩護によって彼自身が風呂敷包の中からとりだした擬装爆弾実はマグネシウム花火などを博士の門前に投げつけ岩蔵を巧みに門外におびき出し、その隙に乗じ、一と足お先に裏門の中に飛び込んだのであった。こんな大芝居でもうたなければ、まるで中世紀の城塞のような辻川博士邸内に忍び入ることはまず不可能だと思われた。学士が潜入した目的は云う迄もないことだが、怪人物辻川博士の動静を探るとともに、邸内の秘密を偵察するにあった。まかり間違えば生命を失う決心をして、彼は怪事件解決のために、中央突破を敢行したわけだった。
繁みからソロソロ匍いだした大隅学士は、幸いに誰に見咎められもしない様子に安心をして、宏大なる邸内の探険にとりかかった。広々とした庭園――それは庭園というのはむしろ不適当で、人造山岳地帯といった方がいいかもしれない。たとえていうと、箱根山塊を三百メートル四方ぐらいの大きさに人造的に縮小した大仕掛けの箱庭とでもいった方がハッキリ博士邸の庭園を説明しているだろう。