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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

折角苦心して入ってきたのであるから、出来るだけの偵察はしたいと思ったのである。彼は草叢からコソコソと匍いだしては樹の上に登り、或いは大きな巌の裂け目に入ったりして、愛用の望遠鏡の力を借りて邸内のあらゆる建物やあらゆる地形を観察して廻った。殊に注意を払ったのは、辻川博士が起き伏しているらしい表現派のような建物の様子であった。しかし何分にも厳重に閉じられた建物の外から観察するのであるから、靴を隔てて痒い足を掻くような焦燥を感じずにはいられなかった。

空中には幾度となく爆音が聞えてきた。それは同志佐々砲弾の乗った「空の虱」の訪問であって辻川博士一味のものに対する示威運動でもあったとともに、僚友大隅の身の上を案じ、これに力をつけてやるためでもあった。

夕方になり、庭園が薄暗くなりかけたとき、それを待っていたように、また「空の虱」が飛び来って、しきりと地上に何物かをさがすかのように低空飛行を試みるのであった。それを見た大隅学士は自分の所在を知らせるため、懐中電灯を空に向けてピカリピカリと点滅した。それが空に通じたものと見え、上からなにか黒いものがポトンと落ちてきた。