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ちきゅうとうなん
地球盗難
海野 十三
「ラヂオ科学」1936(昭和11)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页
髯といえば無精にも伸び放題となり、髪は一本一本逆だち、それも黒毛の間に、白髪がチカチカと秋のすすきのように光っている。身体には、初めは高い値段のものだったろうが、いまはヨレヨレになってむさくるしいというより外はない天鵞絨の洋服をつけ、何十年か前に流行ったような細い黒ネクタイを締めている。――というわけで、どこから見ても只ならぬ精神状態の人物だということが分るのだった。
「……イヒヒヒヒッ。……」
博士は、薄気味わるい笑みを浮べて、廊下に長く伸びた大隅の身体を見下ろした。そして、大隅の身体をスリッパの先でポンポンと蹴ってみたが、一向動く気配のないのを見てとると廊下を向うへスタスタと歩きだした。二、三間も行ったろうか、すると博士は急にクルリと後をふりかえった。そして右手の指を雀の巣のような頭髪のなかにつきこんでゴシゴシやっていたが、やがて大きく肯くと、元のところへ引返して来た。
「……そうだ。こいつを使ってやろう」
使ってやろうとは、どう使うのか分らないけれど、博士はそういうと、大隅の身体に手をかけ、ウンと力を入れて肩に背負うと、また廊下の向うへスタスタと歩きだした。