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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

その声の方に、顔を向けてみると、硝子の中に小さい穴があって、その奥から声が出てくるのだった。

「なにをッ」

と、彼は憤然と怒鳴りかえした。

「どうじゃ。痛みを感ずるようだったら、そう云いなさい。……君、そう顔を横にしないで、顔を正面に向けたがいい」

怪しき声の主は、どこからこっちを見ているのか、佐々の顔色を手にとるようにハッキリと眺めているらしかった。

佐々は気味わるくなって、声のいうとおり顔を正面に向け直した。そのとき正面に何かチラリと動いた影があった。よくよくみると、その正面の硝子板の向うに、怪しげな髯男の顔が薄ボンヤリと見えた。炯々たる二つの眼玉を剥き、小鼻をピクピクさせて、こっちを睨んでいる様子は物凄いというも愚かであったが――その恐ろしい顔には見覚えがあった。

「ウン、貴様は辻川博士だナ。……なんのためにおれをロケットに乗せ、こんな目に合わせるんだ」

博士の顔は、それについて何の応答も与えなかった。そしてなおも熱心に、佐々の面をためつすがめつして、穴が明くかと思われるほど眺めているのだった。

「……ふうむ、これは疑問線の力が弱いのか、それとも疑問線の到来方向が変ったかナ。