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ちきゅうとうなん

地球盗難

海野 十三

「ラヂオ科学」1936(昭和11)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,072 字 · 168 页

青空文庫

彼は愕いて、あれやこれやと調整し得られるものを操ってみたが、遂に求める機影は入って来なかった。……そのうちに東の空がだんだんと白んできた。そしてやがて夜は明け放れた。然し彼の望遠鏡は遂に何の手懸りをも掴む事が出来なかった。

「ああ、砲弾はどこへ飛んでいったのだろうッ……」

と、大隅理学士は、怜悧で勇敢であった同志の身の上を懐って、ハラハラと泪を流したのだった。

爽やかな朝の微風の中に立った彼は、ようよう生き返ったように思った。彼は広い庭をトコトコと歩いて、門脇にある番人の岩蔵の小屋に行ってみた。

岩蔵はもう起きていた。そして傍のベッドの上には、武夫の父河村が、胸一杯に、部厚な繃帯を巻いて、唇は色うすく、顔色は土のように蒼ざめていたけれど、気持よげにスヤスヤと睡っていた。この分なら、大丈夫恢復するだろうという岩蔵の言葉に、彼はホッと安心の胸を撫で下ろした。河村こそは、やがて恢復すれば、この怪事件について参考になることをふんだんに喋ってくれるだろうと思われたので、彼は嬉しくなったのである。

そこで大隅理学士は、あとを岩蔵に頼んでおいて、久しぶりに、下宿していた村の方へ帰ることとなった。