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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

それは、中大兄への反対者の呪いであったことを示している。

その翌年の六月には、中大兄の妻の父である蘇我石川麻呂大臣は、「中大兄を暗殺することを企てた」という理由で、中大兄に殺されている。それにはかならず、こみいった事情があったにちがいない。石川麻呂は、蘇我氏でありながら、中大兄らと共謀して、蘇我入鹿を暗殺した仲間のひとりである。秘密を知っていた人間にちがいない。石川麻呂の反逆企図は、「無実であった」ということであり、中大兄と妻とは、その殺害事件を、後から大いに悲しまれたと伝えられている。けれども、それも、天智一派の策略であったかも分からないのである。

天皇孝徳もまた、中大兄の横暴をいきどおり、その位を退くと言ったこともある。中大兄にたいして、不平であったのであろう。

天智は、不倫にも、その弟の大海人皇子の妻を奪った。そのために、ふたりは互に反目しあうことになったのである。これは、背信不徳の、はなはだしきものであった。天智は、その子の大友皇子、のちの弘文に天皇の位をゆずろうとして、皇太弟大海人は、その地位を去って僧侶とならざるをえなくさせた。そのやり方が陰険であった。