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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

この史実は、それを抹殺しえないのである。

足利幕府は、地方に、有力な多くの大名を置いた。大名は、大きな勢力を握っていた。そのために、統御が困難となり、外国の封建制とおなじような結果をまねいた。世は乱世となった。

織田信長は、将軍義昭をはじめは将軍として奉戴し、のちには、その地位から不法に追いはらった。一五七三年のことである。当時の天皇は、あれどもなきにひとしい状態であった。信長は、一五八二年、その重臣の明智光秀に、本能寺で殺された。すなわち、その権力は九年間であった。光秀は、わずかに数日のあいだ、征夷大将軍となったが、豊臣秀吉に討たれて死に、権力は、秀吉の手に帰した。

豊臣秀吉は、織田氏を完全に亡ぼして、大阪に幕府をひらいた(一五八二年)。そうして国内を統一し、自分の発意で明と朝鮮とを、敵国として戦った。天皇は、権力とは、まったく無関係におかれた。

秀吉が死んで、権力の争奪戦が生じた。全国の武士は、二つの団体に分かれた。一六〇〇年、関ヶ原の一戦に大勝した徳川家康は、必然に、権力者となった。家康は、豊臣氏の権力を奪ったのではない。天皇の権力を奪ったのでは、もちろんない。