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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

今となりては、戊辰の義戦も、ひとえに、私をいとなみたる姿となりゆき、天下にたいし、戦死者にたいして、面目なきぞとて、しきりに涙をもよおされける。」(神崎政穂著『西郷南洲翁遺訓及遺文』)

西郷のこの述懐は、当時の大久保や岩倉らをはじめとして、政府要人の堕落をいきどおったものである。

文学博士重野安繹は、当時の薩州出身の要路者にこびへつらった御用学者であったが、大久保利通のために「神道碑」と称するものを、勅命によって書いている。そのなかには、

「八男一女あり(中略)、第四子以下はみな側室、杉浦氏の出なり(中略)、臨幸したまうや夫人諸子みな謁をたまわる(中略)。臣第の臨御、これをはじめとす。」

この奇怪な「神道碑」を建て、彼らは、大久保の豪奢を、現代と後世とにつたえたのである。彼らの小人物であることを物語っている。「薩人は銭を愛す。」とは、明治時代の人びとが、ひろく口にしたところであった。西郷従道の目黒の大邸宅、大山巌の青山穏田の大邸宅、海江田信義の渋谷桜丘台の大邸宅、芝三田の松方正義の山林のような大邸宅のごときは、じつに広大なものであったが、彼らはいずれも薩州人である。