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てんのう

天皇

蜷川 新

誰が日本民族の主人であるか

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 136,036 字 · 269 页

青空文庫

そうして、たくみに長髄彦の子孫を優偶し、人心をおさめたのであった。その一族が、すなわち物部族であって、「国造」として、大きな領土をもっていた。国造とは、地方にいた領主のことであった。そのほかに、やはり地方に、「国司」というものが古代にはあったが、その起源は明らかでない。

神武の時代から、日本は封建制であったことは、昔の学者も論じている。聖徳太子の十七条の憲法にも「国司」「国造」の存在は、明らかにされてある。武家時代になって、日本は、はじめて封建制の国になったように、論じている日本の歴史家が多くいるのは、あまりにも迂闊である。

神武は、日本全国を征服したのではなかった。中央地区のみ、すなわち長髄彦のもっていた地域の頭となったものと見るのが、正しいであろう。その地区内は、一時はおさまった。神武が死んで、しばらく天皇はいなかった。空位は三年間におよんだ。天皇の位はなくても、日本国は存在していたことを物語っている。その空位のあいだに、神武の子どもたちは相続争いのことで、反目しあった。そうしてついに、皇太子は、その兄手研耳命が、謀反をはかっているという理由から、兄を裁判にもかけず、夜中、その寝所を襲って、みずから射殺した。