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おんなきしゃのやくわり

女記者の役割

野村 胡堂

「文芸倶楽部」1930(昭和5)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,039 字 · 32 页

青空文庫

「景気と言ったって、ボーナスの事じゃないよ。その口はどうせ御同様だが、今晩はもう少し面白い話が始まってるんだ」

高城鉄也は、ウイスキーを一丁、足の勇の為に通させ乍ら、園花枝と顔を見合せて、悪戯っ子らしく莞爾しました。その青年記者のロイド眼鏡の底に光る鋭い眼と、山羊髭を付けた可愛らしい口元は、顔の表情に一種不思議な矛盾を感じさせます。

「何んだエ、どうせ金儲けの話じゃあるまい。真っ直ぐに打ちまけてしまいな」

「つまり、その賭なんだよ」

「角力の春場所かい、今頃野球でもあるまい――」

「そんな古風なんじゃない。新聞記者冥利に、特種競争をしようと言うんだ」

「フーン」

足の勇も少し呆気に取られました。特種競争などという言葉は、今まで聞いたことも無かったんです。

「賭は今日から始まるんだ。一番先に特種を取って、天下をアッと言わした者に、みんなで言いなり放題奢ろうというんだよ」

「面白いな。そんな話なら、俺も一口入れて貰おうじゃないか。気の毒だが東京中の一流の料理屋を、虱潰しに二三十軒飲み歩いて見せるよ」

足の勇は、ズボンの上から脛を叩いてニヤニヤとして居ります。新聞の特種競争を、マラソン競走と間違えそうなところが此男の身上です。