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きょうふおう
恐怖王
江戸川 乱歩
「講談倶楽部」大日本雄弁会講談社、1931(昭和6)年6月~7月、9月~10月、1932(昭和7)年1月~5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 66,038 字 · 133 页
如何にも華やかな、はれがましい結婚式だ。若しこの花婿人形が恐怖王その人であり、花嫁人形が京子の死骸であったとしたら、賊の計画は実に見事に成功したものと云わねばならぬ。
だが、あのとりすました新郎新婦が、人形ではなくて、本物の人間だなどと、そんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか。
「ねえ、先生、花嫁人形がすこしうつむき過ぎてやしないこと。顔が電燈の蔭になってますわね。人形師があんな下手な飾りつけをしたのでしょうか」
熱心に見つめていた夏子が、蘭堂の袖を引いて囁いた。
「ウン、少しおかしいですね。それに、あの顔はどこやら見覚がある」
「エエ、あたしもそう思うのよ。死顔に厚化粧ですもの、少しは相好が変る筈ですわ。一寸見たのでは京子さんに見えないけれど、でも、どっか似てやしないこと」
「そうです。見ている内に段々京子さんの俤が出て来た。それに、あの姿勢が人形にしては少しおかしいですね。店員を呼んで検べさせて見ましょう」
蘭堂は群集を抜け出して、一人の店員を呼止め、何事か囁いた。店員は最初の間、取合おうともしなかったが、段々真面目な顔になって、遂には真青になって、どこかへ駈け出して行った。