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せいじがくにゅうもん

政治学入門

矢部 貞治

「政治学入門」アテネ新書、弘文堂、1951(昭和26)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 49,607 字 · 96 页

青空文庫

といわれるものである。民族が独立国家を持つ欲求は、それがすべての他の民族の同じような欲求を認めて、相互に尊重し合う平和的な国際協調主義となるなら、これを非難することはできないが、民族の野性的な生命力と膨脹の欲求が、知性と自覚によって正しく指導抑制されないときは、結局においては、個人、社会団体、少数民族の自由を無視し、国民を権力の道具と観じ、民族の名において権力者への盲従を強い、そのような盲従と犠牲と同化を神聖な義務だとするようになるし、外に向かっては、他民族の独立を尊重せず、自国の文化の優越を誇り、他民族を征服してその文化の光に浴せしめることが、自己民族の神聖な使命だとし、世界制覇を高唱するようになるのである。それが正に民族主義が、軍国主義や、帝国主義や絶対的国家主義に逸脱した姿である。

いずれにしても、政治を動かす要因としての、民族意識の絶大な重要性を認めねばならぬ。それは同じ民族の中では、統一の力として大きな意味を持つし、異民族の混在しているところでは、分裂と抗争の大きな要素となる。さらに国際政治の領域では、民族とりわけ独立国家をなしている民族こそ、一番基本的な政治主体である。